ご挨拶
姫路城は、わが国で初めて世界文化遺産に登録されたお城です。白亜の大天守閣とそれを取り囲む三つの小天守―この「連立天守群」を中心に、多彩で多様な櫓、門、壁、石垣が連なった姫路城は、すべてのパーツが「美」というコンセプトで統一され、優美な姿で私たちを魅了してくれます。色彩、スタイル、品格、すべてにおいて他の城郭の追随を許さない―その類まれな美しさが、日本の世界遺産第一号という栄誉を得ることになったわけです。
この「世界遺産の本質的価値」は厳密に維持、保存されるべきものであります。同時に、「価値」をさらに高め、膨らませ、多くの人に姫路城の魅力をより強く感じ取っていただくための新しい工夫も凝らさなければなりません。文化財の「保存と活用」という理念が打ち出されたのは、こうした背景からですが、姫路城でも、その取り組みが始まっています。私たちは、お城に彩りを添えるため、和船を建造して濠に浮かべ、世界遺産としての環境を壊さず、姫路城ならではの「新しい歴史的空間」を創り出そうと思っています。かつては、城主が船遊びをしたといった記録もあり、そんな優雅な雰囲気を想定しています。もちろん、観光客の皆さんにも利用していただくことになります。
お城の濠は、いうまでもなく戦闘に備えた最も重要な防御施設です。城に人を近付けないため、もともと厳しい表情を見せているものです。しかし、姫路城では、一度も戦闘は行われていません。珍しい「不戦の城」なのです。そして濠は、船遊びの場に変貌していたのでした。「平和の城」の「平和の濠」に、和船を浮かべるのは、こうした姫路城の原風景の一つを再現することにもなります。
和船建造プロジェクトは、造船の専門家も交え、「手斧始(ちょうなはじめ)の儀」「航(かわらすえ)据の儀」といった古式も取り入れつつ着実に進め、平成25年3月1日無事進水式を終えました。
この間、多くの皆様方のご支援を頂き、感謝しています。また、このプロジェクトを通じて伝統の工法、諸道具、作法など、失われかけた和船技術の保存、後継者育成も図っていくという所期の目的も、果たしつつあり、和船建造技術が健在であることを実証することができたと考えています。
「はりま」と命名された船は、いま、お濠にその優雅な姿を浮かべ、姫路城に新たな彩りを添えています。春と秋に、期間限定で観光客を乗せてお濠巡りをします。安全運航を第一に心がけ、姫路城の賑わいを演出しつつ、観光客の皆さんにご利用いただければと思っています。
(兵庫県立大学特任教授・播磨学研究所長) 姫路藩和船文化協議会 委員長 中元孝迪
組織メンバー
○姫路藩和船文化協議会
・委員長・・・中元 孝迪(播磨学研究所 所長)
・委員 ・・・岡田 兼明(大和産業 取締役社長)
・委員 ・・・矢木 潔(姫路市観光ボランティアガイドの会 会長)
・委員 ・・・村山 豪彦(村山事務所 所長 兵庫県行政書士会 会長)
・委員 ・・・澤田 善弘(綿屋 代表取締役社長)